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STEPPSとは

STEPPSは,対人関係や感情調整に問題を抱えている境界性パーソナリティ障害(Borderline Personality Disorder: 以下BPD)に対するグループトレーニングプログラムとしてアイオワ大学のNancee Blumらによって開発された(Blum, Pfohl, St. John, Monahan & Black, 2002)。STEPPSでは,BPD患者は激しい感情を統制する能力が不足しているという仮説のもと,BPDに変わって感情強度障害(Emotional intensity disorder)という用語を用いている。したがって,STEPPSはBPD患者に限らず,感情のコントロールに困難を抱えるすべての人に対して有効であるとされている。

コクラン共同計画のBPDに効果的とされる心理療法のレビューでは,2012年の時点で弁証法的行動療法(以下DBT)がもっとも有効であるものの,さらなる実証的な研究が必要であると指摘されている。また,DBTのほかには,実証的な研究が行われているものとしてメンタライゼーション療法(MBT),転移焦点化精神療法(TFP),スキーマ療法(SFT),Systems Training for Emotional Predictability and Problem Solving(感情予測と問題解決のためのシステムズトレーニング:以下STEPPS)の名前が挙がっている(Stoffers, Völlm, Rücker, Timmer, Huband  & Lieb,2012)。

STEPPSはDBTに比べてコストがかからず,容易に教えたり理解することができるとされている(Van Wel et al.,2006)。このプログラムは従来の治療法や心理教育的な治療モデルなどに付加価値を加えたものである(Black et al.,2004)。STEPPSは,BPD治療のゴールドスタンダードとされてきたDBTの代わりになるもので,1年かかるDBTやもっと長いその他のMBT,TFP,スキーマ療法などの介入に比べて,その特徴は20セッションという簡便さにあると紹介されている(Joyce,2013)。

本プログラムは,感情への対処と行動への対処の二本柱からなり,全20回である。1グループは2名のファシリテーターおよび6~10名のグループメンバーで構成することが推奨されている。週に1回のトレーニングは,症状のアセスメントに始まり,リラクセーション,宿題の共有,新たなスキルの学習という流れで行われ,約2時間を要する。毎回,次回までの宿題が出る。

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